October 2006

October 07, 2006

from Waikiki.


アサオです。
どーいうわけか今ハワイに来てます。妻のお供で。
オーシャンフロントの9階の部屋でコバルトブルーな水平線が一望。
なんというか、ラオスだのミャンマーだの行ってると、
いざこんなベタなところに来てみると、目が点になってしまう。
ポリネシアンや日系ハワイ人の流暢な日本語を聞いていると、
タイのパッポンで「ロレックス安イヨ。」とかのアヤシイ日本語が懐かしくなる。

最近、年齢のせいか、自国の良さをいろいろと実感しつつある。
なんだかんだ言っても自分は日本人であって日本が好きなんだと思うことが多い。
だから今回のように不本意に日本を離れるとなると、無性に日本食が恋しくなり、
ボーディングの直前に天婦羅うどんを食べた。
大して美味くもない筈なのに、この時ばかりはやたら美味く感じ、
一口々々を噛み締めながら味わった。
汁も飲み干してどんぶり鉢をテーブルに置くと、もう死んでも悔いは無いとさえ思えた。

咀嚼と嚥下には人としての歓びがある。

5年前、約一年間の再入院生活の末、祖父が他界した。
他界する前日、家族や親族が数人集まって病院へ見舞った。
さて昼食をという段になり、祖父と付き添いの祖母を病室に残して立ち上がったところ、
ずっと点滴だけで栄養摂取してきた祖父が、おれも連れて行け、と言い出した。
皆と一緒にいたいのかと思って車椅子に乗せて食堂まで連れて行くと、
驚いたことにホットケーキを注文した。
しかも2枚出されたうちの1枚を食べきった。
皆が驚いて祖父の食べる姿に目を見張った。
その夜、祖父は他界した。

今年の夏には祖母が他界した。
台所のテーブルの下に寝転がっているところを、死後2日目に発見された。
どうやら心臓発作を起こし、椅子からずるずると崩れ落ちたようだった。
しかし彼女の顔には苦しんだ様子がまるで無く、あっさりと心臓が停まったのだと窺えた。
彼女が最後に食べたのはコーヒーゼリーだった。
台所のテーブルには食べ終えられたコーヒーゼリーの空のカップとスプーンがあった。
二人は幸福の内にこの世を去ることが出来ただろうか。

そう言えば記憶を辿ると、祖父の父は他界する直前に西瓜を所望し、
祖父が心斎橋の果物屋を走り回ったという話を聞かされたことがある。
もし私なら、死を前にして所望するのはフレンチトーストに違いない。
などと思っていたが、今回ハワイに行く際にやたら所望したのは天婦羅うどんだった。
人の味覚は体調や精神状態に著しく左右されるということか。

今回のハワイ旅行に際して、妻はインターネットを駆使して様々な情報を収集した。
妻にとっては3度目のハワイとなるが、とりわけグルメ情報には余念がなく、
実際に旅行した人による最新のクチコミ情報を集めてプリントアウトして持って来た。
それによると、朝食には卵料理とパンケーキが美味い「Eggs'n Things」が
かなり高く評価されていた。
待つだけの価値がある!と言う。
とは言え1時間も待つのはさすがにダルいので、朝6時に起床して7時にはホテルを出た。
朝まだきカラカウア通りをふたり連れ立って北上する。
陽はまだ高くなく、爽やかな気候の下ジョギングに興じる人も多い。
聞いてはいたが、日中は陽射しが熱く感じるものの、気候じたいが暑いと感じることはない。
30℃あるらしいが、とてもそうは思えないほど、空気がサラサラとして心地よい。
そんなハワイの爽やかな朝を楽しみながら店に着くと、いるわいるわ日本人の群れ。
日本人が店の外のベンチに座っている。
店の中では豚小屋のように狭苦しく詰め込まれて食べている。
15分ほど待って私らの順番が回って来た。
みんな美味しそうにオムレツやパンケーキ、ホイップを死ぬほど盛りつけたワッフルを食べている。
妻はパンケーキ3枚とスクランブルエッグのセット、私はフレンチトーストを注文した。
黙って味わうこと数分。

……そんなに美味いか?

人の味覚は体調や精神状態に著しく左右されるということか。
美味しいと紹介された店に来たから、いま私が食べているものは美味しいのだ、
とでも思っているとしか考えられない。
日本人のクチコミ情報なんてアテにならない。

(今日の写真:ラブリーにゃんこ at ワイキキ/ハワイ)

061010

scott_street63 at 23:05|PermalinkComments(11)TrackBack(0)  | アメリカ