October 2010

October 26, 2010

Discommunication.


宇宙人との会話は成立するのか―――。
深夜のマクドナルドで友人とそんな話になった。
我々地球人は基本的に言語を口腔から発して会話する。
一言で片付かない複雑な想いを持っていても、発する場所は口腔の一つしか無いものだから、人は手振りを大きくしたり声高に話したりして言葉を補い、終いには怒るか泣くかなど感情を昂ぶらせ、通じない相手にじれったさを覚えて煩わされる。
広大な宇宙の中には地球人よりも遥かに進化した生物が存在すると考えられている。
彼らは音声ではなく、目から発する光で会話するかもしれない。
その光は一瞬の内に多くのデータ(想い)を発信することが出来る。
そんな宇宙人を目の前にした時、我々アナログな地球人は彼らと会話を成立させることが出来るのだろうか。
彼らからすれば進化の遅い地球人は野を走る獣と変わらないのである。
旅の間の言葉はどうしているのかとよく尋ねられる。
英語の通じない所も多い。
それでも伝えたい想いと理解に努める優しさが相互にある限り、何とかなる。
地球人同士で良かったと安堵する限りである。


ポンサーリーは中国系プーノイ族が人口の大半を占める街である。
街中で交わされる言葉もプーノイ語であり、聞こえる響きはタイ語に近いラオ語とは異なり、中国語に酷似している。
ポンサーリーでの主食は主に米粉を練った麺であり、バゲットも餅米も見かけない。
ここはもはやラオスにあってラオスではない。

ポンサーリー3日目の朝、早くも帰途に就く時を迎えた。
片道三日を要するため、7日間の休暇では丸一日滞在するのが限界だった。
バスターミナルに行くと、ウドムサイ行きのバスの隣りに思いがけずヴィエンチャン行きのバスが停まっていた。
これに乗れば途中で1泊することもなくルアンパバーンへ直接行くことが出来る。
乗車券売り場の窓口に聞くと、ルアンパバーンまで110,000kip、8時の出発。
切符は車内で買ってくれと言う。
私はこのヴィエンチャン行きのバスに乗り込み、ウドムサイ行きのバスを見送った。

出発までの30分を同じ車内に乗り合わせた数人の客と待つ。
―――が、定刻になっても運転手は現れない。
やがて車外で走り回っていた助手と思われる男がバスに乗り込み乗客に向かって何かを話すと、他の客は何も言わずにバスを降りていった。
訳が分からず、彼にタイ語で尋ねてみた。
 「アライナ?(何だ?)」
通じたのかどうか判らないが、彼が何を答えても私には理解出来る筈もなかった。
それを見て取った男は、ジェスチャーを始めた。
まずはハンドルを回す仕草―――運転手のことだろう。
次にバスターミナルの隣りのゲストハウスを指差し、両手を顔の横で重ねて目を瞑って見せた。
つまり、運転手がまだゲストハウスで寝ていると言うのか?
ならば何時に出発するのか?
 「キーモンチャパイ?(何時に出発する?)」
恐らく通じるだろうと思い、もう一度タイ語で尋ねてみた。
 「ムンウー、パーディエン」
【パーディエン】8時。【ムンウー】―――解らない。
 「プルンニーパーディエン?(明日の8時か?)」
 「ムンウー。ムンウーパーディエン。」
時間だけは解るのだが、大事な部分がさっぱり解らない。
もしかして今夜の8時なのか?
ノートを出して時計の絵を描いて見せた。
8時を示した時計と太陽。
そして矢印を書いて、次に8時を示した時計と三日月と星を描いた。
 「ムンウーパーディエン、ボー?」
次第に複数の男らに囲まれていたが、みな首を傾げた。
さらに矢印を書き、再び朝日と8時の時計を描いて見せる。
しかしそれでも皆目解らないらしい。
どうも絵の意味が理解できないようだ。
最後の頼みと思ってガイドブックを開いてみた。
私の持っているものは2001〜2002年版と古いものだったが、巻末の頁を繰っていくと、見付けた。

 【ムンウー】明日

そうだ!これだ!と周りの男たちも目を輝かせて喜んだ。
苦労の末に漸く理解し合えた喜びに助手と私は互いに握手を交わし、他の男たちも晴れやかな表情で解散して行った。
私には絶望的な宣告を突き付けられただけだとは、さすがに誰も解らなかったようだ。


言語が違うからなどと恐れることは何も無い。
むしろ同じ言語を話しているからこそ理解し合えないことも多い。
言葉尻ばかりを捉え、言葉の裏に隠れた真意を読み解く努力を怠っていないか。
言葉の通じない者同士だからこそ相手の真意を知ろうと必死に努める。
諦めて突き放さず、理解し合えるまで我慢強く対話を重ねる。
その努力こそあれば、変わる結果も多いに違いない。


因みに翌日、贖罪のつもりかバスは無茶なスピードで一気に山を駆け下り、
なんとか0時を回る前にはルアンパバーンに辿り着けた。
信じてみるものだ。

(今日の写真:プーノイ族の姉妹。確かに中国人ぽい。)
20100502_105

scott_street63 at 03:13|PermalinkComments(0)TrackBack(0) | ラオス