November 19, 2006

TRAVEL CAFE.


ビジネス街・本町のど真ん中に「TRAVEL CAFE」なるカフェが開店した。
「旅を体感できるカフェ&バー」という謳い文句だっただけに
開店を心待ちにしていたのだが、ボジョレー発売が解禁された先日、
開店後2ヶ月にしてようやく機会に恵まれ訪れた。
店内には50インチのプラズマディスプレーが入り口と奥の2カ所に設置され、
美しい外国の景色が絶え間なく放映されている。
…ただそれだけ。
“「旅」と「カフェ&バー」を融合した新しいタイプのお店です。”
とかなんとかフライヤーに書いておきながら、ただそれだけの店。
その程度のアイデアしかないんならいっそスクリーンも何もないほうが
ずっとマシだ。
初モノということでボジョレーを注文しようと店員を呼んだ。
 「ここのボジョレーはどこの?」
 「え…?どこ、の…?」
 「ほら、産地とか、レーベルとか。」
 「え…、ちょ、ちょっと聞いてきます。」
解禁当日というのに、店員の教育もその程度な店なのか。

「旅」と「旅行」は違う。
どちらも住み慣れた土地を離れての移動を意味する言葉であるが、
一般的に「旅行」と言えば楽しげな意味合いを含んで聞こえるものの、
「旅」と言えば、どこかストイックなものとして捉えられるべきじゃないだろうか?
ストイックなものである以上、「旅」は単独で行われるべきものと
私の中では決まっているが、
単身インドへ行くと言う妻の友人は、彼がウェブ上で公開している日記上で
「旅行」として扱った。
大学時代の知人などは、「旅」と称して男二人でインドへ渡った。
彼らを見ていると、ストイックであるか否かという抽象的な区別は
改めるべきかもしれない。


ビエンチャンにて、ある工学博士と知り合う機会があった。
旅が終盤を迎え、ルアンナムターからビエンチャンに戻ってきた夜、
現金の心もとない私はクレジットカードの利く欧米人の集まる店へ
夕飯を食べに行った。
生のビアラオとラオス風鶏肉カレー、フレンチフライで計3.5ドル。
ラオスの通貨は「kip(キップ)」だが、国民が自国の通貨を信用していないため
米ドルでの支払いがまかり通る。もとい、米ドルでの支払いの方が喜ばれる。
欧米人の集まる店では通常米ドルでしかメニューに記載していない。

賑やかな店内でひとり黙々と食べるのは少々つらい。
旅の疲れも手伝ってか、店内の騒がしさが寂しい気持ちに拍車をかける。
誰か似た境遇の人はいないかと辺りを見回すと、メガネをかけた、
この場に似つかわしくない日本人男性がいた。
ポロシャツにスラックス―――ビジネスで来たのだろうか。
話しかけて良いものか長く迷ったが、彼が「地球の歩き方」を開いたところを見て
旅行者だと判断を下して話しかけてみた。
 「お一人ですか?よければ同席させてもらっても構いません?一人で食べるのも飽きてきたので…」
彼は快く承諾してくれた。
話をすると某大学の助教授にして工学博士らしく、NGOの要請を受け、
10人のグループを組んでビエンチャンの大学に赴き、
IT関連の開発に携わったと言う。
ラオス滞在は1週間。
他の9人と通訳は今朝ひと足先にバンコクに戻って
夜の盛り場を楽しんでいると言う。
しかし彼は自分の足でこの街を歩きたいと思い、
ビエンチャンに滞在することにしたらしい。
 「なにせ毎日ホテルと大学の間をお迎えの車で行き来して、食事はレストランやホテルで用意されてるわけですからね、日本にいるのと全く変わらないんですよ。この国の中にいるのに、外から眺めてるだけ。時間があればもっとこの国のことを知りたかったんですがね。」
彼はこの一週間の滞在で感じたラオスの教育の遅れ、経済状況の酷さを語ったのち、
国内の他の地域について尋ねてきた。
私はデジカメで撮った写真を見せながら話した。
話は盛り上がり、ビアラオの追加を注文してさらに話しこんだ。

さて時間もいい頃合いだし、とお愛想となった。
彼は4.5ドルの伝票に対して20ドル紙幣しかなかった。
私はクレジットカードで払おうとしたが、カードリーダーが故障との理由で、
泣く泣く残り少ない米ドルを手放すことになった。
一方彼は、お釣りとして15.5ドル分のラオスキップ紙幣をどっさりと渡された。
互いに苦笑し、是非いちどルアンパバーンにも行ってみて下さいと
彼の手の分厚い札束を指して勧めた。


トラベルカフェにて、さっきの店員が戻ってきた。
 「ボジョレーはボジョレーです。」
自信満々に答える彼女に呆気に取られた。
社員に聞いてそんな回答とは、ボジョレー並みに浅く若いということか。
旅を語るには深さも経験も足りない。


(今日の写真:夜のKIX at かんくう/大阪)

061119

scott_street63 at 20:40│Comments(6)TrackBack(0) | ラオス

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この記事へのコメント

1. Posted by みえごん   November 20, 2006 00:47
トラベルカフェ、わたしも名前を聞いて気にはなってたんですが。。。そっか、プラズマテレビに外国の風景が映し出されてるだけなのね。
ボジョレーの件も、トラベルカフェと語るにはあまりに情けない対応。(−∧−;)
ちょっぴり残念。

わたしが考える『旅』は、期限もスケジュールも何もかもが行き当たりばったりなイメージ。
逆に『旅行』は、観光をメインにしたもので、事前にスケジュールがある程度決まっているもの。
単独で行く場合は『旅』も『旅行』も両方使うけど、数人で行く場合は『旅行』のみかな?

わたしは度胸がないので、(団体)『旅行』しか経験したことがないけれど、しっかり自分と向き合うことのできる『ひとり旅』を生きてる間にできればいいなぁ。。。
2. Posted by アサオ   November 20, 2006 01:09
そーなんです!
大事なことは自分と向き合うかどうかなんです。
ただ非日常な景色を見て楽しむだけではなく、
訪れた土地とそこでの時間を通じて自分の内面世界を旅する。
旅の醍醐味は異文化あるいは未知との出会いにありますが、
自分でも知らなかった自身に出会うきっかけを与えてくれるのもまた旅だと思います。
息子さんの教育の一環として旅なんてのも、いいかも…?
3. Posted by みえごん   November 25, 2006 00:09
うちのだんなは息子を『18歳になったら海外に放り出す!』と言ってる(´∀`;)
見ず知らずの土地で自活する度胸、そしてお金の大切さを身をもってわからせるためだとか。。。

『旅』とは自分探しにうってつけの機会なのかな???
4. Posted by アサオ   November 27, 2006 02:01
>みえごんさん
異文化の地域を旅することで改めて自分自身を発見するということはよくありますよ
それは多分、逆さまに映る鏡を見ることで自分の姿を確認するのと同じかもしれませんね。
言葉の通じない、しかも両親もいない土地で生活することは間違いなく本人を強く逞しく成長させますよ。
ほら、うちの奥さんみたいに…?
心配でしょうけど、昔からの格言通り「可愛い子には旅をさせよ」だと思いますよ。
5. Posted by ずしおー   December 03, 2006 02:49
そのへっぽこカフェをどうやったら本物のトラベルなカフェに鍛え上げることができるのか…。
陳舜臣の『神戸ものがたり』って本に書いてあるんですが、昔、大金持ちの社長が世界一周旅行だといって邸に客を集めて、上海に着いたと言っては中国風の菓子をふるまい、シンガポールではフルーツ、セイロンでは紅茶、フランスでは名画の複製を並べてワイン、ドイツではビール、テーブルの上をドーバー海峡を渡るもちゃの飛行機が走り…ってなバカさわぎをしたそうな。
それぐらいやりゃあいいのにね、そのお店も。
一時間ごとに地域が移っていくの。ウェイトレスの衣装もチャイナドレスとかいろいろ変わる。BGMと映像、それからもちろんメニューも。
北朝鮮では喜び組の接待を受けVIP気分を満喫、熱帯地域ではマラリア蚊がリリースされ、ロシアでは寿司といっしょに放射性物質のサービス、中東では料理の爆発に注意。
どうでしょう、お客さん。
6. Posted by アサオ   December 06, 2006 21:17
おぉ、ずしおーさん!コメント戴いてたんですね!
自分のブログすらあんまり見ないんで気付きませんでした。もー垂れ流してそれっきり状態です。
トラベルカフェ、ほんとそれぐらいやってほしいもんです。
ぬるいんですよね、演出が。
白いアオザイを着たおねぇさんなんかいたら、どんなに忙しくても素通りはできないですね。
それがアオザイ姿の喜び組なんて言ったら…!もう毎晩入り浸りですわ。
で、おねぇさんにノセられてウランにぎりをイッキ喰い。
旅に危険で甘いワナは付き物ですから。
わが旅路に悔い無し!!

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