September 05, 2008

行先は風に聞け。


「お兄ちゃん、何所行くの?」と慌てて訊ねる桜に、
「さぁな、風に聞いてくんな。」と言って寅次郎はまた旅に出る。
映画『男はつらいよ』は寅次郎が旅から戻り、また旅に出ることで成立する。
寅さん風に表現するなら最近の私にはどうやら風が吹いて来ないらしい。

3月末に新疆ウイグル自治区を旅して以来、5月に両親を連れてアンコールワット、
8月には妻に引き摺られて上海経由ホーチミンへと旅行し、年末には再び妻と二人でポーランド、翌年の旧正月には家族でハワイ旅行が待ち構えている。
傍目には私の風は吹き荒んでいる様に見えるのだろうが、それは「旅」ではなく「旅行」なのだ。

旅とは何かと訊かれたら、私は必ず移動することだと答える。
あるいは目的地に到着するまでの過程である、と。
私の義姉は、移動こそ無駄で煩わしいものだと言う。
ただ目的地と目的地でのアクティビティのみを目的とする行為を私は「旅行」と呼ぶ。
「旅」は目的地までの過程=移動を楽しむことにある。

そういう意味では船旅というのもたまには良いかもしれない。
大阪から釜山なら一晩だから、釜山に着いたら韓国の新幹線=KTXでソウルへ上り、ソウルから空路で帰国。
あるいは神戸から上海・蘇州の旅。
2泊3日の船旅のため、到着したら翌日には空路で帰国。

しかし船旅というものはどうなんだろう?
鉄道なら車窓の風景、飛行機でも時々見える地上の景色が目を楽しませてくれるものだが、ただひたすらに海である。
2泊3日でこの景色はさすがに飽きるかもしれない。

チベットのラサまで、敢えてバスで峠越えを挑んでみるのも人生に一度はいいかもしれない。
ラサの標高は3,700メートル程度。
しかしラサへ到達するまでの道は標高5,500メートルを超える。
頭痛、吐き気、下手をすれば高山病と闘いながら一路ラサを目指す旅路。
帰りは気圧調整機能付きの鉄道で優雅に下山。

他に、今自分は何処へ行きたいだろうと旅に想いを馳せてみる。
あるいは、今自分が本当にやりたい事は何だろう。

2〜3か月前のこと、友人宅を訪ね、自分が何をやりたいのか分からないという話をしてみたところ、その友人の奥方が何気なく発した言葉が今でも強烈に印象に残っている。

 「お家の仕事を手伝うこともアサオさんのやりたいことなんでしょ?」

返す言葉がなかった。
あまりにも的を射た意見だった。
確かに今自分は仕事を楽しんでいる。
他の何よりも誇りを持って今の仕事に従事している。
地に足を着けてしまった私の旅は、もうすぐ終わってしまうのかもしれない。

寅さんの教えに従って、次の行先を風に聞いてみる。

風は吹かず、何も教えてはくれなかった。

(今日の写真:アンコールワットは右手へ at シェムリアップ/カンボジア)
080904

scott_street63 at 00:12│Comments(0)TrackBack(0)  

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