April 11, 2010

New Year @ Haerbin, China.


列車は定刻に到着した。
2010年1月1日午前7時28分、ハルピン駅。
この鉄路の旅で偶然同じコンパートメントに乗り合わせた者同士の
 「拝拝(バイバイ)」
と言い合う声が其処此処から耳に入る。
袖触れ合うも他生の縁。
とは言え、一期一会。
たまたま同じ部屋となった中国人青年らと私が再会することは、少なくとも今生ではあり得まい。

暖房の効いた車内から一歩外に出ると、猛烈な寒風に顔面の皮が張り付いた。
寒いと言うよりも痛い。
噂に違わぬ極寒の地。
皆背中を丸め、マフラーで口元を覆いながら、しかし長旅の末の終着駅に高揚してか会話を弾ませながら一塊りとなって出口へと向かう。
写真を撮ろうとひと度手袋を脱ぐと、氷水の中に手を突っ込んだ時と同様に手が痺れた。
鼻から出る水気を含んだ息がその場で凍るのか、マフラーで隠さなければ常に鼻の穴の周囲に何かが纏わり付く不快感が拭えない。

駅を出ると、街中は自動車やバスが引切り無しにクラクションを鳴らしながら活発に行き交い、商店や食堂では重苦しい雪雲の下で客寄せの声を挙げ、成る程、中国北端の玄関口に違いないと納得する。
泣けて来る程の寒さから一刻も早く身を守りたく、凍結している足元に警戒しながら逃げるように急ぎ足でホテルへと向かった。
早朝にも拘わらず、ホテルは快くチェックインさせてくれた。

正午過ぎ、仮眠のあと中央大街へ徒歩で向かう。
ガイドブックによると、ロシア風建築の多い異国情緒溢れる所だと言う。
駅に近いホテルを選んだため、中央大街までは結構な距離がある。
鉄道の線路を越えるため、駅の地下を抜けられないかと探してみたり、バイパスに上り、車の行き交う車道の真横を歩き、迷いながらも部屋で見た地図の曖昧な記憶だけを頼りになんとか辿り着いた時にはもう2時を回っていた。
真冬のハルピンは日中の最高気温がマイナス20℃。
部屋を出る前に、ダウンジャケットの背の裏に簡易カイロを上下に1枚ずつ貼り、ポケットに各1個、ブーツの隙間にもそれぞれ1個ずつねじ込んだ。
お陰で上半身は寒くないのだが、ポケットとブーツのカイロは余りの寒さのためか殆ど機能せず、始終振っては痛む指先を温めなければならなかった。

中央大街は、期待していた様な風情はあまり無く、土産物屋や有名ブランドのショップがひたすら軒を連ねていた。
それでも来たからには端まで行こうと、半ば辟易しながらも時々店を覗いたり、暖を取るために冷やかしたりしながら歩を進めた。
行き着いたのは、松花江(ソンファーガン)という大きな川だった。
川幅1kmはあろうかという大きな川面は、完全に凍結していた。
手前では子供向けにスケートリンクが開かれ、中央では馬車や自動車が対岸まで走っている。
これには驚いた。
こんな光景は日本でもなかなか見られない。

他の観光客と同じく、私も嬉しがって真ん中まで川面を歩いてみた。
ど真ん中で曇天の空を仰ぐ。
広い。
静かだ。
私を煩わせる雑音など無い。
その代わりに、この喜びを分かち合う者も隣にはいない。
自由を獲得した代償は思いのほか大きいのか。

2010年1月1日を以って妻と離婚した。
眼前に伸びる私の道は、この川の様に真っ白く、静かで、何も無い。


(今日の写真:松花江 at ハルピン/中国)
100410

scott_street63 at 04:32│Comments(0)TrackBack(0) | 中国

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔