April 16, 2011

A long night in Kolkata 2


サダルストリートを目指して夜の街へ飛び出すと、玄関前に皺くちゃの爺さんがリクシャー(人力車)の持ち手を地面に休ませて座り込んでいた。
 「ヘイ、ジャパーニー、何処かお出かけかい?」
嗄れた声でにこやかに話しかけて来たが、こんな年寄りに1時間もかかるサダルまでなんてとてもじゃないが頼めない。
 「サダルストリートまで行くんだ。」
 「オーケー、オーケー、50ルピーで行くぜ。」
何キロも離れた所までたった約125円で行くと言うのか?
いくらインドだからって安すぎる。
 「サダルって遠いんだろ?出来るだけ早く行きたいんだ。」
 「ノープロブレム。50ルピー、O.K.?」
 「だめだ。30ルピーだ。」
突然ホテルのドアボーイが横から割って入ってきた。
背は高くないがガッチリした体格のいかつい男で、ドアボーイと言うよりもむしろ門番と呼んだ方が相応しい。
男は爺さんを睨み付け、渋々30ルピーで了解した爺さんのリクシャーの座席へと私を丁重に促し座らせてくれた。

リクシャーは夜の街をゆっくりと走った。
人力とは言え車なのだから「走った」と表現する他ないのだが、実際には彼は歩いていた。
えっちらおっちらとゆっくり歩き、時折ひどく咳き込むものだから、このまま心臓発作でも起こして死んでしまうんじゃないかと気が気でなかった。
しかし人力車でゆっくりと往くというのもなかなか風情があって良い。
京都の八坂神社辺りを人力車に乗ってみるのも良いかもしれないと、インドまで来てそんなことを思った。
三叉路を左折した所で彼は尋ねて来た。
 「で、何処まで行くんだい?」
 「え…、サダルだよ。サダルストリート。」
ついに呆けたのかと一瞬冷や汗をかいたがそうではなかった。
 「ここがサダルストリートだよ。」
驚いた。
10分もかからず着いたと言うのだ。
さらにもう少し直進してもらうと、次第に若い欧米人や日本人が道に溢れて来た。
なるほど、確かに安宿街の集まるサダルストリートらしい。
フロントスタッフの言った「1時間」とは何だったのか?
空港から乗ったタクシーも、「あと1キロ」、「あと5分」と言っておきながらなかなか辿り着かなかった。
アバウトにも程があると言うべきか、つまりそういう国民性なのか。
リクシャーには適当な所で降ろしてもらい、最初に言った50ルピーを渡すと大層喜んでくれた。

サダルストリートを歩いていると、しばしば「ジャパーニー」と声を掛けられた。
それは物売りであったりタクシーであったりリクシャーであったり物乞いであったり、あるいは単に好奇心で声を掛けただけであったり…
いや、むしろ皆好奇心だったのかもしれない。
とにかくインドの男は大人になっても無邪気なのだ。
そのまま真っ直ぐ突き抜けると自動車が勢いよく走る大きな道路に出た。
車の通りも激しいが、歩行者の数も並ではなく、皆押し合い圧し合い歩いてる。
ただでさえ人の多い歩道だというのに、そこに露店もずらりと並んでいるものだから窮屈なことこの上ない。
なるほど、ここがチョウロンギ通りかと、ようやく自分の位置を確認した。

夥しい人混みの中を歩いていると、また「ヘイ、ジャパーニー」と声を掛けられた。
振り向くと、柔和な顔をした人の良さそうな青年だった。
 「一人かい?良かったら一緒に歩かない?」
こちらも特に行くアテがある訳でもないから、またゲイだったら嫌だなぁと思いながら
「いいよ。」と答えた。
タイやラオスでは何度かゲイにナンパされている。
どうやら私の顔は男が好む人相らしい。

歩きながら私らは話した。
彼はバングラディシュから定期的に買出しに来ているらしく、カルカッタにいる時は叔母の家で滞在しているらしい。
彼は私に、いつカルカッタを出るのか、バラナシからいつまた帰ってきていつ日本に帰るんだと詳しく聞いてきた。
彼の自然で奥ゆかしい振る舞いから何も隠さず話すと、彼は言った。

 「キミは英語が上手いね。」

そんな筈がない。
私の英語は中学生レベルだ。
わざわざそんなことを言うのは私をおだてて気を良くさせようという魂胆なのだと、今までの経験が警告を放つ。
 「ところで、ここら辺でチャイでもどうだい?いい店を知ってるんだ。」
警戒しながら、しかしチャイという言葉に惹かれてそのまま付いて小さな食堂に入った。
1杯5ルピー。
私が金を出そうとすると彼に止められた。
 「これぐらい驕るよ。その代わり、次の機会に出してくれたらいいから。」
 「ヘイ!アーユージャパニーズ?」
いきなり隣のテーブルにいた男が話しかけてきた。
 「コニチハ。ワタシハ日本ノ埼玉ニ3年間住ンデマシタ。ワタシ日本人ダイ好キ。」
偶然にも私らの席の隣りは日本語の堪能なインド人だった。
(つづく)

scott_street63 at 01:50│Comments(2)TrackBack(0) | 初インド旅記録

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by ずしおー   April 24, 2011 00:11
この青年は何者だったんでしょう。アサオ氏の財布は、オシリは、無事だったんでしょうか。この先の展開が気になります……もうっ、すぐにこんなにワクワクしちゃって……ああ、恥ずかしい。
2. Posted by アサオ   April 26, 2011 22:33
ずしおちゃんったら、ちょっと想像力たくまし過ぎ!でもインドの夜は怖いんです。犯るか犯られるか!?次回をお楽しみに。…とか言ってまた1ヵ月以上放置プレイしちゃったらごめんなさい

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔